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嚢胞性線維症関連糖尿病

目次

疾患概要

嚢胞性線維症関連糖尿病(CFRD)は、嚢胞性線維症(CF)に合併する独特の糖代謝異常で、主にインスリン分泌不足を主体とします。自己免疫でβ細胞が破壊される1型とも、インスリン抵抗性が中心の2型とも異なり、CFに伴う膵外分泌組織の破壊や炎症、感染が背景にあります。

CFRDは思春期以降に増え、成人CF患者の約半数で発症すると報告されています。体重減少、肺機能低下、感染リスク増大などCFの転帰に影響するため、早期の発見と介入が重要です。無症候でも進行することがあるため系統的なスクリーニングが推奨されます。

臨床的には空腹時血糖が正常でも、食後高血糖や経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で異常が先行することが多い点が特徴です。栄養戦略は高カロリー・高脂肪のCF食を基本とし、CFRD管理でも原則維持されます。

治療はインスリンが第一選択で、経口血糖降下薬の役割は限定的です。適切な血糖管理は栄養状態と肺機能の改善、入院回数の減少に結びつき、生命予後の向上につながるとされています。

参考文献

病因と病態生理

CFRDの基盤はCFTR遺伝子変異により膵外分泌腺が繊維化・脂肪置換を生じ、膵島が二次的に損傷されることです。これによりインスリン分泌が不十分となり、食後高血糖が目立つパターンが多くみられます。

慢性肺感染や全身炎症、栄養不良がインスリン分泌能をさらに低下させ、入院やステロイド投与時には一過性のインスリン抵抗性が加わり高血糖が悪化します。これらは環境・治療関連要因として発症時期と重症度に影響します。

インクレチン応答の低下やグルカゴン分泌異常など、膵ホルモン間の協調不全も報告されています。胃腸運動の変化や吸収異常、膵酵素補充療法などの因子も糖代謝に複合的に関与します。

一部では2型糖尿病関連の修飾遺伝子(例:TCF7L2など)がCFRD発症リスクや年齢に影響する可能性が示唆されていますが、主要因はあくまでCFTR変異に由来する膵島機能不全です。

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症状と合併症

CFRDは初期に自覚症状が乏しいことがあり、体重減少や成長遅延、運動耐容能の低下、易感染性の増大など、CFの症状の陰に隠れることがあります。口渇・多飲・多尿などの典型的糖尿病症状は遅れて出現しがちです。

血糖コントロール不良は肺機能(FEV1)の低下と関連し、急性増悪の頻度や入院回数の増加と結びつきます。適切な血糖管理は栄養状態の改善と呼吸器転帰の向上に寄与します。

長期的には網膜症、腎症、神経障害などの細小血管合併症のリスクがあり、他の糖尿病と同様のスクリーニングが推奨されます。ただしケトアシドーシスは稀です。

妊娠、移植、静脈栄養、ステロイド使用時には高血糖リスクが上昇し注意が必要です。チーム医療での個別化されたモニタリングと介入が重要です。

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診断とスクリーニング

CFRDの診断にはOGTTが最も感度が高く、10歳以上のCF患者では毎年のスクリーニングが推奨されます。空腹時血糖やHbA1cのみでは見逃されることがあり、OGTTが重要です。

診断基準は一般の糖尿病と同様(OGTT2時間値≧200 mg/dL、随時血糖≧200 mg/dL+症状、A1c≧6.5%など)ですが、CFRDでは食後高血糖の早期検出が臨床的に価値を持ちます。

連続血糖測定(CGM)は高血糖パターンの把握や治療調整に有用で、運動や感染、ステロイド使用時の変動把握に役立ちます。

入院時や肺増悪、経管栄養導入時には一時的な高血糖を見逃さないよう、ベッドサイドでの頻回血糖測定が推奨されます。

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治療と生活管理

CFRDの第一選択治療はインスリンで、基礎・追加インスリン療法などを個別化して用います。経口薬は効果が限定的で、栄養維持を優先するCFの治療目標とも整合しにくいことがあります。

栄養は高エネルギー・高タンパクを基本とし、膵酵素補充療法を適切に併用します。運動は筋力維持と肺機能改善に役立ち、低血糖予防の工夫を加えつつ推奨されます。

CFTRモジュレーター(例:イバカフトルやElexacaftor/Tezacaftor/Ivacaftor)は一部で膵内分泌機能の改善を示唆する報告があり、CFRDのリスクや経過に影響する可能性があります。長期成績の集積が進んでいます。

多職種チーム(呼吸器、栄養、内分泌、看護、薬剤、心理)が連携し、感染管理と血糖管理を同時に最適化することが予後改善に不可欠です。

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