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右手の握力

目次

右手の握力の概要

右手の握力は、手指と前腕の屈筋群が発揮する最大等尺性筋力を指し、ハンドグリップダイナモメータで簡便に測定できます。身体機能や健康度の汎用バイオマーカーとして用いられ、心血管疾患やフレイルの予後とも関連します。

一般に利き手(多くは右手)は非利き手よりも強く、日常生活・職業・スポーツなどの使用頻度により左右差が形成されます。測定は姿勢や握り幅の標準化が重要で、左右交互に複数回測定して最大値を用いるのが通例です。

握力は年齢とともにピーク(およそ20–40歳代)を過ぎると低下し、男女差では男性が女性より高値を示すのが一般的です。体格や身長、筋量、神経筋機能など多因子の影響を受けます。

臨床ではサルコペニアやフレイルのスクリーニング指標として、一定のカットオフ(例:男性<28kg、女性<18kg[アジア基準])が用いられます。右手だけでなく左右両側の評価と文脈解釈が推奨されます。

参考文献

生理学的基盤と利き手の影響

握力は前腕浅指屈筋・深指屈筋・長母指屈筋などの筋群が、正中神経・尺骨神経を介する運動単位の動員で発揮されます。脊髄前角細胞から皮質運動野に至る神経系の出力と、腱・筋紡錘の感覚入力が統合されます。

最大握力には動員可能な運動単位数・発火頻度・同期性などの神経要因と、筋横断面積・筋線維タイプ・腱の力学特性といった筋骨格要因が関与します。疲労や疼痛、末梢神経障害はこれらの要因を阻害します。

利き手は幼少期からの使用頻度・巧緻動作の学習により神経筋適応が進み、平均して非利き手より約10%高いとされます。ただし個人差・職業やスポーツ歴で逆転する場合もあります。

測定上は握り幅(手の大きさに対する最適幅)や体幹・肩の安定化が出力に影響するため、標準化手順を守ることで再現性が高まります。

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遺伝と環境:割合と関連遺伝子

双生児・家族研究では握力の遺伝率は概ね30–60%と報告され、残りは環境要因(身体活動、栄養、疾患など)で説明されます。遺伝率は年齢・性別・測定法により変動します。

大規模ゲノム研究(UK Biobankなど)では、筋発達・神経シナプス形成・細胞外マトリクスに関わる多数の座位が同定されています。効果量は小さく多遺伝子性が特徴です。

候補遺伝子としてACTN3(R577X多型)やMSTN(ミオスタチン)経路、BDNFなどが挙げられますが、単独で握力の大部分を規定するものはありません。生活環境との相互作用も重要です。

したがって個人の右手握力は「遺伝素因×環境」の産物であり、トレーニングや栄養最適化による改善余地が広く残されています。

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測定基準と臨床的意義

臨床・研究での標準機器はJamar型などの等尺性ダイナモメータです。座位で肘屈曲90°、前腕中間位、手関節軽度背屈で左右2–3回測定し最大値を採用します。

アジアではAWGS 2019が低握力のカットオフ(男性<28kg、女性<18kg)を提唱し、フレイル・サルコペニアのスクリーニングに用いられます。

握力低下は転倒、ADL低下、入院・死亡リスク上昇と関連し、健康寿命の指標として健診や地域フレイルチェックに組み込まれています。

日本の高齢者データでは年齢とともに低握力者の割合が増加し、身長や体重、身体活動で補正することが推奨されます。

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予防・改善戦略

最も効果的なのは週2–3回の抵抗性トレーニングで、前腕・手内在筋だけでなく全身の大筋群を鍛えることが握力・機能の改善に寄与します。握る・引く動作のバリエーションが有用です。

高齢者では体重1.0–1.2g/kg/日のたんぱく質摂取を目安に、ビタミンD充足、十分なエネルギーとともに分配摂取(毎食)を心がけます。腎機能に応じた個別調整が必要です。

慢性疾患(神経・関節・心肺)の最適治療、禁煙、十分な睡眠、身体活動の増加が握力の維持に貢献します。疼痛やしびれがある場合は専門医で原因評価を行います。

地域ではフレイル予防事業や介護予防教室の活用が推奨されます。測定は安価・短時間で可能なため、定期的な自己チェックと専門家の助言が役立ちます。

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