右かかと骨密度
目次
右かかと骨密度(calcaneal eBMD)の基礎
右かかと骨密度は、かかとの骨(踵骨:calcaneus)の骨量・骨質を反映する指標で、超音波法(QUS)やDXAにより推定されます。踵骨は海綿骨が豊富で代謝回転が速く、全身の骨代謝や骨粗鬆症リスクの早期指標になりやすい部位です。特に地域健診では、非侵襲で簡便なQUSが広く用いられています。
右かかとに限定する臨床的理由は多くありませんが、左右差は一般に小さく、装置や施設の運用上「片側固定」で測定されることが多いです。研究では再現性確保のため同側での追跡が推奨されます。
QUSでは音の減衰(BUA)や音速(SOS)から合成指標(stiffness、eBMD)を算出し、骨折リスクの層別化に役立てます。DXAと完全同等ではありませんが、集団スクリーニングや外来初期評価で有用です。
右かかと骨密度の低下は無症候で進行しやすく、骨折(特に脊椎・大腿骨近位部)リスク上昇の代替マーカーとなります。陽性例ではDXA精査や総合的リスク評価(FRAX等)が推奨されます。
参考文献
測定法・解釈と限界
QUSは放射線被曝がなく、持ち運び可能で、右かかとを装置に挟んで短時間で計測できます。測定条件(温度・ゲル塗布・足の位置)や装置間差が結果に影響するため、同一機での縦断評価が望ましいです。
DXAは腰椎や大腿骨でのBMD測定が標準ですが、QUSでリスクが高いと示唆された場合、DXAで診断確定や治療適応の判断を行うのが一般的です。
QUSのしきい値は装置依存で、Tスコアの解釈をDXAと同一視しないことが重要です。QUS単独で治療適応を最終決定するのではなく、臨床背景と合わせて判断します。
右と左の踵骨の差は通常小さいものの、既往の局所骨折や装具使用、片側荷重の偏りがある場合は反対側測定やDXAを考慮します。
参考文献
遺伝学的背景と環境要因
骨密度は強い遺伝的影響を受け、双生児研究では全身BMDの遺伝率は50〜80%と報告されています。踵骨由来のeBMDでも多遺伝子性が示され、SNPベースの遺伝率はおよそ20%前後と推定されます。
GWASではWNT16、LRP5、SOST、TNFRSF11B(OPG)、TNFSF11(RANKL)など骨形成/骨吸収経路の遺伝子座が一貫して同定されています。これらは骨リモデリングのセットポイントに影響します。
環境因子として、運動(荷重刺激)、カルシウム・ビタミンD摂取、日光暴露、喫煙・多量飲酒、体重、糖質コルチコイドの使用などが右かかと骨密度に影響します。
遺伝と環境は相互作用し、特に閉経後のエストロゲン低下下では、荷重刺激の有無や栄養状態が踵骨の微細構造維持に大きく関与します。
参考文献
- Morris et al., Nature Genetics 2019(eBMD GWAS)
- Kemp et al., Nature Genetics 2017
- Endocrine Reviews 2010(Genetics of Osteoporosis)
臨床的意義(症状・リスクとスクリーニング)
右かかと骨密度そのものに自覚症状はありません。低下が進むと脆弱性骨折の発生率が上昇し、特に脊椎圧迫骨折や大腿骨近位部骨折が生活機能に大きな影響を与えます。
QUSで低値が示された場合、FRAXなどのリスク評価ツールと併用し、DXAで確定評価を行う流れが推奨されます。早期の発見は転倒予防介入や薬物療法開始の適切なタイミングをもたらします。
スクリーニングは65歳以上女性、危険因子を有する閉経前後女性や高齢男性で推奨されます。糖質コルチコイド長期内服、低BMI、喫煙、既往骨折などは優先度を高めます。
地域によっては保健事業での踵骨QUS検診が行われています。陽性者は医療機関でのDXAや二次性骨粗鬆症の鑑別を受けるとよいでしょう。
参考文献
予防と治療の概略
予防の柱は、荷重・筋力トレーニング、十分なカルシウムとビタミンD、禁煙・節酒、転倒予防です。踵骨は荷重反応性が高く、歩行・階段昇降・ジャンプ系の安全な運動が有効です。
薬物療法はリスクに応じて、ビスホスホネート、デノスマブ、テリパラチド、ロモソズマブなどを用います。選択は年齢、腎機能、骨折既往、治療目標により個別化されます。
治療は日本の公的医療保険の対象で、自己負担は年齢等により1〜3割が一般的です。高額療養費制度により自己負担には上限が設けられています。
治療を始めても、運動・栄養・日光暴露・転倒対策などの生活介入を継続することで、右かかとを含む全身の骨強度維持が期待できます。
参考文献

