単球数
目次
単球数の基礎知識
単球は白血球の一種で、血液中を巡回しながら感染や組織損傷に反応する細胞です。血液検査では、白血球分画の一部として単球割合と、単球の絶対数(絶対単球数)が報告されます。一般に成人では単球は白血球の2〜8%程度、絶対数はおよそ0.2〜0.8×10^9/Lの範囲に収まります。これらの値は年齢や体質、急性・慢性の炎症状態で変動します。
単球は骨髄で産生され、血中を比較的短期間循環したのち、組織へ移行してマクロファージや樹状細胞へ分化します。この過程は自然免疫の中心的な流れで、病原体の貪食や抗原提示、組織修復に関与します。したがって単球数は、体内での免疫反応の強さや質の一端を反映する指標となります。
臨床では単球数の増加(単球増多)や減少(単球減少)が診断の手掛かりになります。増多は慢性感染症、自己免疫疾患、回復期、骨髄増殖性疾患などでみられ、減少は重症感染、骨髄抑制、遺伝性疾患、ステロイド薬の影響などでみられます。単一の値だけで断定せず、経時的変化や他の血球系の異常と併せて評価することが重要です。
単球はさらに機能の異なるサブセット(古典的・中間・非古典的)に分けられます。これらの割合は炎症や動脈硬化、感染症などで変化し得ます。一般的な自動血球計数装置ではサブセットは区別しませんが、研究や特殊検査ではフローサイトメトリーにより識別されます。
参考文献
- Cleveland Clinic: Monocytes: Function, Range & Disorders
- UCSF Health: Complete blood count (CBC) - monocytes
- Merck Manual Professional: Monocytosis
単球数の正常範囲と解釈の基本
単球の正常範囲は検査機関や年齢により差がありますが、成人では絶対単球数で約0.2〜0.8×10^9/L、割合で2〜8%が目安です。小児では幅が広く、成長とともに成人値へ近づきます。妊娠、喫煙、運動、日内変動などの生理的要因も軽度の変動をもたらします。
検査結果は絶対数を優先して解釈します。割合は総白血球数の変化に影響されやすく、例えば好中球の増加時には単球割合が相対的に低く見えることがあります。逆に白血球全体が低いと割合が高く見える場合もあるため、絶対数を確認することが重要です。
単球増多は一般に0.8×10^9/L超、特に1.0×10^9/L以上が持続する場合は評価が必要です。慢性骨髄単球性白血病(CMML)では0.5×10^9/L以上かつ白血球の10%以上の単球増多が3か月以上持続することが診断の一条件です。臨床症状や末梢血塗抹、他の血球の異常を併せて検討します。
単球減少は0.2×10^9/L未満を目安とし、重症感染症や敗血症、骨髄抑制、ステロイド治療、希少な遺伝性疾患(GATA2異常など)でみられます。反復感染や原因不明の発熱、体重減少などの症状がある場合は、医療機関で精査が必要です。
参考文献
- MedlinePlus: Monocytes (Health Topics)
- Merck Manual Professional: Chronic Myelomonocytic Leukemia (CMML)
- UCSF Health: CBC reference ranges
単球数を測る方法と理論
単球数は一般的に全血を用いた全血球計算(CBC)と白血球分類(ディフ)で測定されます。自動血球計数装置は電気抵抗(コールター原理)や光学散乱、蛍光染色などを組み合わせて白血球を5分類し、単球の絶対数と割合を算出します。
コールター原理では、細胞が小さな孔を通過する際の電気抵抗変化から体積を推定します。光学散乱はレーザー光の前方散乱や側方散乱の強度パターンから細胞の大きさや内部構造を推測します。これらを統合し、単球を他の白血球と識別します。
精度向上のためにハイドロダイナミックフォーカシングや多角度散乱、ペルオキシダーゼ活性染色などが併用される機種もあります。異常細胞や強い炎症で分類が難しい場合は、末梢血塗抹標本を作成し、顕微鏡で形態学的に確認します。
前分析要因として、採血から測定までの時間、抗凝固薬の種類、強い運動や脱水、日内変動などが結果に影響します。安静採血し、適切に搬送・測定された検体で評価することが重要です。
参考文献
- NCBI Bookshelf: Clinical Methods – The Complete Blood Count and Bone Marrow Examination
- Sysmex XN-Series Technology (white paper)
単球数の遺伝的要因と環境要因
血球数には遺伝と環境の双方が関与します。ゲノムワイド関連解析(GWAS)や双生児研究では、単球数の遺伝率(集団におけるばらつきの遺伝的寄与)は概ね15〜30%程度と推定される報告が多く、残りは環境や生活習慣、感染・炎症などの要因によると考えられます。
大規模コホート(UK Biobank 等)を用いた血球形質の解析では、単球数に関連する多くの遺伝子座が同定されています。これらは造血や免疫シグナル伝達に関わる遺伝子群で、基礎的な単球の産生や機能に影響しますが、日常的な変動の大部分は非遺伝的要因です。
環境要因としては、急性・慢性の感染、喫煙、肥満、ストレス、薬剤(特にステロイドや化学療法)、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患などが挙げられます。これらは単球の動員や生存、組織への移行に影響し、血中の単球数を上下させます。
遺伝率は集団と時代に依存する統計量で、個人の将来値を決定する数値ではありません。個々人においては生活習慣の改善や基礎疾患の治療が単球数の是正に大きく寄与することが多い点に留意が必要です。
参考文献
- Astle et al. The Allelic Landscape of Human Blood Cell Trait Variation and Links to Disease. Cell (2016)
- Vuckovic et al. The Polygenic and Monogenic Basis of Blood Traits and Diseases. Nature (2020)
異常値が示唆することと対応
単球増多は慢性感染症(結核、心内膜炎など)、炎症性疾患(炎症性腸疾患、関節リウマチ)、回復期、脾臓摘出後、悪性疾患(特にCMMLなどの骨髄系腫瘍)でみられます。持続する場合は要因探索が必要です。
単球減少は重症感染や敗血症、骨髄不全・抑制状態、ステロイド治療、希少な先天性免疫不全症などで起こります。感染リスクの増大につながる可能性があり、臨床症状に応じた迅速な評価が求められます。
対応として、まずは再検で一過性変動かを確認し、末梢血塗抹で形態異常を評価します。炎症反応、感染の有無、自己抗体、ビタミン欠乏、薬剤歴などを確認し、必要に応じて血液内科へ紹介します。CMMLが疑われる場合は骨髄検査や遺伝子検査を検討します。
緊急受診が必要なサインには、高熱、意識障害、呼吸不全、出血傾向、急速な全身状態悪化などがあります。こうした症状を伴う単球異常は、基礎に重篤な病態が隠れている可能性があるため、速やかな医療介入が必要です。
参考文献

