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全身の体脂肪率

目次

定義と意義

全身の体脂肪率は、体重に占める脂肪組織の割合を示す指標で、体組成(脂肪・筋・骨・体水分)のうち脂肪部分の比率を%で表します。健康評価では単独よりも他の指標と併用され、肥満関連疾患のリスク層別化に役立ちます。

同じBMIでも体脂肪率は性別・年齢・民族で大きく異なります。一般に女性は生理学的に体脂肪率が高く、加齢に伴い筋量減少と脂肪増加(サルコペニア肥満)が進みます。こうした差は同じ体重でも代謝リスクが異なる背景になります。

体脂肪率は総量だけでなく分布(内臓脂肪と皮下脂肪、異所性脂肪)も重要です。特に内臓脂肪の増加はインスリン抵抗性や動脈硬化リスクの上昇と強く関連します。したがって、体脂肪率の理解は量と質(分布)の両面から必要です。

臨床や健康診断では、体脂肪率の目安を示す基準はあるものの、測定法や人種差で閾値は揺れます。絶対値にこだわるより、経時的な変化と併せて個人のリスクを評価することが実用的です。

参考文献

測定方法の基礎

体脂肪率の測定には二重エネルギーX線吸収測定(DXA)、生体電気インピーダンス法(BIA)、皮下脂肪厚測定、空気置換式体積測定(Bod Pod)などが用いられます。研究や臨床での精度はDXAが高いとされます。

BIAは簡便で反復測定に適しますが、水分状態や食事、運動直後などの条件に影響されやすい弱点があります。測定条件を標準化することで、日々の変化や介入効果を追いやすくなります。

皮下脂肪厚測定は訓練を受けた測定者なら再現性が高い一方、肥満度が高い場合や極端な体型では誤差が増えます。体積法は被検者の負担が少ないものの、装置の普及性に限界があります。

内臓脂肪量はウエスト周囲径やウエスト身長比(WHtR)で近似できます。特にWHtR<0.5は簡便なスクリーニング指標として有用で、心代謝リスクとよく相関します。

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遺伝と環境の寄与

体脂肪率や肥満の表現型は多因子性で、双生児・家族研究では遺伝率が中等度から高いことが示されます。体脂肪率やBMIの遺伝率は概ね40〜70%の範囲と報告されています。

一方で、環境因子(食事の質と量、身体活動、睡眠、薬剤、社会経済要因)が表現型を大きく左右します。遺伝素因があっても環境を整えることで発現は抑制できます。

ゲノムワイド関連解析ではFTO、MC4R、PCSK1など多数の座位が脂肪量や摂食行動と関連しますが、各変異の効果量は小さく、多遺伝子リスクの総和が重要です。

遺伝と環境は相互作用し、超加工食品の入手容易性や座位行動の増加など現代環境は遺伝素因の影響を増幅しやすい「肥満促進環境」として働きます。

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健康影響と臨床的意義

体脂肪率の上昇、とくに内臓脂肪型の増加は、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患などのリスク上昇と関連します。これは臨床的に重要な転帰に直結します。

脂肪細胞の肥大化に伴う慢性低度炎症、アディポカインの異常、インスリン抵抗性の進行が病態の根底にあります。心血管リスクはウエスト径やWHtRでもよく説明されます。

同じ体脂肪率でも分布が異なればリスクは変わります。皮下脂肪優位の人は内臓脂肪優位の人に比べ代謝リスクが低い傾向があります。臨床では分布の評価が欠かせません。

逆に体脂肪率が過度に低い場合は、ホルモン異常、骨粗鬆症、免疫力低下などの問題が生じ得ます。適正範囲を目指すことが健康維持の鍵です。

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予防と介入の基本

体脂肪率の管理は、エネルギー収支の最適化と生活習慣の改善が中心です。地中海食や伝統的な和食など未加工食品を基盤とした食事はエネルギー密度が低く満腹感を得やすい特徴があります。

身体活動は有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせが有効です。週150〜300分の中強度活動と全身の筋力トレーニングを週2日以上行うことが推奨されます。

睡眠の確保、ストレス管理、アルコールの適正化も体脂肪率に影響します。睡眠不足は摂食制御ホルモンを撹乱し、過食を促すことが知られています。

薬物療法や外科治療は合併症や高度肥満で選択されますが、いずれも生活習慣介入と併用することで長期成績が向上します。フォローアップと再発予防が重要です。

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