Forest background
バイオインフォの森へようこそ

体表面積

目次

体表面積(BSA)の概要

体表面積(Body Surface Area, BSA)は、人体の皮膚の総面積を推定した値で、単位は平方メートル(m^2)です。身長と体重から経験式で計算され、薬剤投与量や生理機能の補正など臨床・研究で広く用いられます。

BSAはBMIと異なり、体格のスケール(身長と体重の組合せ)を反映するため、代謝量や循環量などの規模依存性を調整する目的で使われます。特に小児から成人までの比較に有用とされています。

成人のBSAは概ね1.6–2.2 m^2程度で、乳児では約0.2 m^2と小さく、成長に伴って増加します。臨床指標では1.73 m^2が「標準化面積」としてしばしば用いられ、腎機能評価の補正に登場します。

BSA自体は疾患ではなく症状もありません。あくまで計算上の指標であり、使用文脈(薬物動態、循環器、生理学、栄養評価など)を理解して解釈することが重要です。

参考文献

代表的な算出式と特性

歴史的に最も有名なのはDu Bois & Du Bois式で、身長と体重からBSAを近似する経験的式です。原法は直接測定した少数データに基づくため、現代では他式と併せて検討されます。

Mosteller式は計算が簡便(BSA(m^2)=√(身長(cm)×体重(kg)/3600))で、誤差が小さいことから臨床現場や電子カルテで広く採用されています。

Haycock式は乳幼児から成人まで妥当化され、小児領域での精度が高いとされます。体格の極端な人では式間でわずかな差が出るため、一貫した式の使用が推奨されます。

いずれの式も推定値であり、実測BSAとは完全には一致しません。薬剤用量や生理指標の補正に使う場合は、施設標準やガイドラインに従うことが大切です。

参考文献

臨床での主な利用場面

抗がん剤ではmg/m^2で投与量を決める慣行が残っており、体格差による過量・低量投与を避ける目的でBSAが用いられます。ただし薬物動態の個人差はBSAだけでは説明しきれません。

腎機能の推定糸球体濾過量(eGFR)は1.73 m^2に標準化して報告されることが多く、体格が大きい人や小さい人では非標準化値との併用解釈が必要です。

循環器では心係数(Cardiac index)が心拍出量をBSAで割って算出され、体格差を補正して循環動態を評価します。エコーの弁口面積や心室容積の指標もBSA補正されます。

熱傷では「全身の何%がやけどか(TBSA%)」という別概念が用いられます。これはBSAの算出式とは異なるが、体表の割合という観点で近縁概念として現場で併用されます。

参考文献

性別・年齢・集団差とBSA

BSAは身長と体重の分布に依存するため、性別・年齢・地域集団で平均値が異なります。一般に成人男性は女性より平均BSAが大きく、加齢で体格が変化するとBSAも変わります。

世界的には栄養状態や生活様式の変化に伴い、身長・体重が時代とともに変化してきました。これに応じて平均BSAも推移しており、地域差も少なくありません。

日本では戦後の栄養改善で身長・体重が増加しましたが、近年は肥満とやせが併存する傾向が見られ、平均BSAにも影響します。調査年齢階層や方法で値は異なります。

臨床では個人ごとのBSAを計算して用いるのが基本です。集団平均は参考値に過ぎず、極端な体格(小児、高齢、肥満、るいそう)では特に個別評価が重要です。

参考文献

限界と注意点

BSAで用量を標準化しても、吸収・分布・代謝・排泄の個人差は完全には補正できません。腎機能や肝機能、薬物相互作用、遺伝的要因などを併せて評価する必要があります。

肥満患者ではBSAに基づく減量投与が過少投与を招く懸念があり、ASCOは実体重ベースの用量設定を推奨するなど、薬剤ごとの指針に従うことが重要です。

一部薬剤ではBSAではなくAUCベース(例: カルボプラチンのCalvert式)や治療薬物モニタリング(TDM)が推奨されます。目的に応じて最適な指標を選択します。

式間差や丸め処理、単位変換のエラーも臨床影響を及ぼし得ます。施設内標準の明確化と一貫運用、使用式の明記、電子計算の検証が推奨されます。

参考文献