二重まぶた
目次
概要
二重まぶたは、上まぶたに明瞭な「上眼瞼溝(じょうがんけんこう)」という折り目がある状態を指し、解剖学的には挙筋腱膜の皮膚への付着と眼窩隔膜・眼窩脂肪の位置関係で形づくられます。病気ではなく身体的多様性の一つで、民族・個人差が大きい形質として知られています。
東アジア系では二重・一重の両者が一般的に見られ、欧米系では明瞭な上眼瞼溝がほぼ普遍的です。文化的・審美的な価値観から美容医療の対象となることがありますが、機能障害がなければ医療保険の適用外のことが多いです。
形態は単なる「二重の有無」だけでなく、内側や外側のどこから始まるか、幅は広いか狭いか、複数の折り目(多重)かなど豊富なバリエーションがあります。
年齢とともに皮膚の弛みや挙筋腱膜の変化が進み、二重の形が変化したり、新たに折り目が形成されたりすることもあります。
参考文献
発生機序(解剖学的背景)
上眼瞼の折り目は、上眼瞼挙筋の腱膜から分岐した線維が皮膚前葉に付着し、眼を開けると皮膚が引き込まれて溝が現れることで形成されます。
アジア人では眼窩隔膜と挙筋腱膜の移行部が下方に位置し、前脂肪が下方に張り出すため、腱膜線維が皮膚へ到達しにくく、明瞭な溝がない「一重」になりやすいと説明されます。
二重形成術(埋没法・切開法)は、皮膚—腱膜(または瞼板)間に新たな癒着や連結を作ることで、機能的な引き込みを人工的に再現します。
これらの解剖差と外科的操作に関する知見は、形成外科・眼形成外科の文献で詳細に記載されています。
参考文献
- Anatomy of the Asian upper eyelid and implications for surgery (Park 2010)
- EyeWiki: Asian Blepharoplasty
遺伝と環境の寄与
二重まぶたは家族内に集積し、遺伝の影響が示唆されますが、単一遺伝子で説明される形質ではなく、多遺伝子(ポリジーン)と発生学的・加齢変化が重なる多因子形質と考えられています。
現時点で「遺伝◯%・環境◯%」のような厳密な寄与率は確立していません。これは表現型の定義が多様で、民族差・加齢・生活習慣・美容介入などが交絡しやすいためです。
顔面形態の遺伝学研究(GWAS)は進んでいますが、上眼瞼溝の有無に特異的で再現性の高い候補遺伝子は限定的です。
したがって「遺伝要因が強いが、環境や加齢で形が変わる」という実務的理解が現時点では妥当です。
参考文献
遺伝的要因(候補と限界)
東アジア人に多い形質の一部はEDARなどの遺伝的多型と関連する可能性が議論されていますが、二重まぶたの有無を直接規定する確立した因子としては位置づけられていません。
PAX6など発生に必須の遺伝子の異常は重篤な眼形成異常を来しますが、これは正常範囲のまぶた形態差とは別問題です。
家系内での高い一致は知られるものの、厳密な遺伝率(heritability)推定を与える双生児研究や大規模コホートの報告は乏しいのが現状です。
結論として、二重まぶたは多遺伝子性の可能性が高いが、特定遺伝子・変異の実名と効果量を一般化できる段階には達していません。
参考文献
環境・加齢要因
加齢に伴う皮膚の弛緩や挙筋腱膜の変性は、二重の出現や形の変化(多重化、幅の変化)を引き起こすことがあります。
長期のコンタクトレンズ装用や慢性的な強いまぶたのこすり癖は、腱膜性眼瞼下垂のリスクを上げ、結果として上眼瞼溝の見え方を変える場合があります。
アイテープやのりによる毎日の整容は一時的に折り目を作りますが、恒久的な形態変化の科学的証拠は限定的で、過度の刺激は皮膚炎の原因となり得ます。
体重変動や局所の浮腫は一過性に二重の幅を変化させることがありますが、恒常的な形質決定因子としての影響は大きくありません。
参考文献

