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乾癬性関節炎

目次

概要

乾癬性関節炎(psoriatic arthritis, PsA)は、皮膚の乾癬に関連して起こる関節炎で、関節の痛みや腫れ、こわばりに加え、腱や靱帯が骨に付着する部位(付着部:エンテシス)の炎症が特徴です。症状は手足の小関節から脊椎まで多様で、爪の変化(点状陥凹など)もよく伴います。

一般人口における有病率は地域により0.1〜1%程度とされ、乾癬患者の約20〜30%が生涯のどこかでPsAを発症します。発症年齢は30〜50歳が中心で、男女差は大きくありません。皮疹に先立って関節炎が出ることもありますが、多くは乾癬発症後に関節症状が現れます。

放置すると不可逆的な関節破壊や機能障害を来すことがあり、早期診断と治療が重要です。近年は腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬、IL-17阻害薬、IL-12/23やIL-23阻害薬、JAK阻害薬、PDE4阻害薬など多様な選択肢が整い、病勢の制御と生活の質の改善が期待できます。

診断は臨床症状と画像所見、鑑別診断を総合して行い、研究や臨床で広く用いられる分類基準としてCASPAR基準があります。自己抗体は陰性のことが多く、血液検査で特異的なマーカーはありませんが、炎症反応の高値や画像での付着部炎が手がかりになります。

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症状と臨床像

PsAは関節炎、付着部炎、指趾炎(ソーセージ様腫脹)、脊椎炎のいずれかまたは複合で現れます。朝のこわばり、関節の腫れと痛みは典型的で、日内変動や活動による増悪がみられることがあります。

指や足趾が全体として腫れる指趾炎は、腱鞘炎や付着部炎が背景にあり、診断の手がかりになります。爪の点状陥凹や肥厚、爪甲剥離は頻度が高く、遠位指節間関節の病変と相関が強いとされます。

脊椎や仙腸関節に炎症が及ぶと、腰背部痛や可動域低下が生じます。皮膚の乾癬は肘、膝、頭皮、耳介周囲、臀部、臍周囲などでよくみられ、時に関節炎より先行・遅行します。

症状は寛解と増悪を繰り返すことが多く、疲労感や気分障害など全身症状も併発します。関節破壊や新生骨形成により変形が進むことがあるため、早期からの治療介入が勧められます。

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病態生理

PsAの病態は、皮膚・関節・付着部に共通する免疫経路の活性化により説明されます。特にIL-23/Th17軸とTNFが中心的で、IL-17A/FやIL-22などのサイトカインが炎症と骨代謝異常を駆動します。

付着部には機械的ストレスに反応する常在免疫細胞が存在し、IL-23刺激で炎症が誘導されることが動物モデルで示されています。これが付着部炎や指趾炎、脊椎病変の基盤と考えられます。

関節内では滑膜炎だけでなく、骨びらんと同時に骨新生(骨芽細胞活性化)を伴うことがあり、関節リウマチと異なる骨病変パターンが特徴です。WntやBMP経路など骨形成シグナルの制御不全が関与すると考えられています。

遺伝背景としてHLAクラスI(例:HLA-B27、B08、B38など)やERAP1、IL23R、TRAF3IP2などが関わり、環境因子(肥満、外傷、感染など)と相互作用して発症リスクを規定します。

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遺伝・環境因子

家族集積性が強く、第一度近親者にPsAがいると一般人口より大幅にリスクが高まります。乾癬の家族歴もPsA発症リスクに寄与します。

遺伝学的にはMHC領域(HLA-B27、B08、B38など)と非MHC領域(IL23R、TRAF3IP2、ERAP1、TYK2など)が同定され、自然免疫・抗原提示・IL-23/IL-17経路が中であることが支持されています。

環境因子として、肥満は機械的負荷と全身炎症の双方を通じてリスク増大と関連します。皮膚への外傷や反復する機械的ストレスは付着部炎を誘発しやすく、発症の引き金になり得ます。

喫煙、感染症、腸内環境の変化、ストレスなども関連が報告されていますが、因果関係の強さにはばらつきがあります。総じて、明確な予防法は確立していないものの、体重管理や禁煙は推奨されます。

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診断と治療

診断は病歴・身体診察、血液検査、画像検査(超音波、MRI、X線)を組み合わせます。研究・臨床で用いられる分類基準としてCASPAR基準が広く認知されていますが、診断は医師の総合判断です。

治療は、疼痛・炎症コントロールと構造的損傷の抑制、機能維持を目標に、NSAIDs、局所注射、csDMARDs(メトトレキサート等)、PDE4阻害薬(アプレミラスト)、生物学的製剤(TNF、IL-17、IL-12/23、IL-23阻害薬)やJAK阻害薬を個々の病態に応じて選択します。

皮膚・関節・付着部・脊椎などドメインごとの活動性を評価し、目標達成に向けて治療を段階的に強化する「Treat-to-Target」戦略が推奨されます。理学療法や生活指導、合併症管理も重要です。

最新の国際推奨として、GRAPPA 2021推奨やEULARの推奨があり、患者の希望や併存疾患、薬剤の安全性プロファイルを考慮して治療方針を決めます。定期的なモニタリングと早期介入が転帰改善に寄与します。

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