乾癬
目次
乾癬とは何か
乾癬は、皮膚に赤く盛り上がった境界明瞭な発疹と白銀色の鱗屑が現れる慢性の炎症性疾患で、自己免疫の仕組みが関与します。世界では約2〜3%が罹患し、日本では約0.3〜0.6%とされています。痒みや見た目の影響により、生活の質が大きく低下します。
典型的には肘や膝、頭皮などの擦れやすい部位に生じますが、全身どこにでも起こり得ます。爪の点状陥凹や爪甲剥離などの爪病変を伴うことも多く、約3割では関節に炎症が及ぶ乾癬性関節炎が発症します。
乾癬は感染症ではないため、他人にうつることはありません。遺伝的な素因に環境要因(皮膚外傷、感染、肥満、喫煙、ストレス、ある種の薬剤など)が重なり、慢性的な皮膚炎症が継続することが重要です。
治療は外用療法から光線療法、全身療法、生物学的製剤まで多岐にわたり、病型や重症度、合併症、患者さんの価値観に応じて選択されます。適切な治療で皮疹をほぼ消失させ、長期的にコントロールすることも可能になっています。
参考文献
病態生理:免疫と皮膚の対話
乾癬では樹状細胞が活性化し、IL-23などのサイトカインを産生してTh17細胞を誘導します。このTh17軸から分泌されるIL-17やIL-22が角化細胞に作用し、過剰な増殖と炎症性サイトカイン産生を引き起こします。
角化細胞自体も単なる標的ではなく、抗微生物ペプチドやケモカインを産生して炎症ループを増幅します。真皮では血管新生が進み、表皮のターンオーバーは通常の数倍に短縮し、厚い鱗屑が形成されます。
外傷部位に病変が出現するコブナー現象や、連鎖球菌感染後の滴状乾癬は、環境トリガーが病態に深く関わることを示します。系統的にはHLA-C*06
、自己/微生物由来抗原への反応性が高まると考えられています。この免疫経路の理解により、TNF、IL-17、IL-23を標的とする生物学的製剤が開発され、高い有効性と皮疹の完全寛解(PASI90/100)が現実的な治療目標となりました。
参考文献
遺伝要因:HLAと炎症関連遺伝子
乾癬の遺伝率は双生児研究でおよそ60〜80%と推定され、遺伝的素因が強いことが示されています。最も強い関連はPSORS1領域のHLA-C*06
、特に若年発症・滴状型との結びつきが知られます。ゲノムワイド関連解析では、IL12B、IL23R、TNFAIP3、TRAF3IP2、LCE3B/3C欠失など多数の座位が同定され、抗原提示、NF-κB制御、角層バリア、Th17軸など多層の生物学的経路が関与します。
ただし一つひとつの遺伝子の効果は限定的であり、ポリジェニックリスクと環境因子の相互作用が発症に至る鍵です。家族歴がある場合でも必ず発症するわけではなく、生活習慣や誘因管理が重要です。
民族差もみられ、欧米集団での寄与が大きい座位と東アジアでの座位には違いが報告されています。これらは治療反応性や病型の違いを一部説明する可能性があります。
参考文献
環境要因:誘因と修飾因子
乾癬の発症・増悪には複数の環境因子が関与します。代表は皮膚外傷(コブナー現象)、上気道の連鎖球菌感染、肥満、喫煙、過度の飲酒、心理的ストレス、日焼け(時に改善も)などです。
薬剤ではβ遮断薬、リチウム、抗マラリア薬、インターフェロン、急な全身性ステロイドの中止などが増悪に関連します。HIV感染も難治化の要因になります。
体重増加やインスリン抵抗性は炎症を増幅させ、乾癬の重症化や治療反応に影響します。逆に減量や禁煙、節酒、ストレス対処は改善に寄与することが示されています。
環境因子は変えられる領域であり、医学的治療と並行して誘因管理を行うことが長期寛解の近道です。患者教育と多職種連携が重要です。
参考文献
診療と治療の選択肢
軽症ではステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用、配合剤、保湿が基本です。頭皮や爪には部位特異的な処方や手技が求められます。中等症以上ではナローバンドUVBなどの光線療法が有効です。
全身療法にはメトトレキサート、シクロスポリン、アシトレチンなどがあります。感染症や肝腎機能などの安全性管理が必須で、妊娠計画にも配慮します。
生物学的製剤はTNF、IL-17、IL-12/23、IL-23を標的とし、高い寛解率とQOL改善をもたらします。近年は経口のTYK2阻害薬など新規薬剤も登場し、選択肢が拡大しています。
併存症(メタボリック症候群、心血管疾患、うつ・不安、NAFLDなど)の評価と管理、乾癬性関節炎のスクリーニングを並行して行うことが推奨されます。
参考文献

