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リンパ球数

目次

概要

リンパ球数とは、血液中に含まれるリンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞など)の数を指し、通常は1マイクロリットル(μL)あたりの細胞数で表されます。一般的には「絶対リンパ球数(ALC)」として、白血球総数に占めるリンパ球の割合から算出され、免疫状態の大まかな指標になります。感染症、自己免疫、悪性腫瘍、薬剤、栄養状態、ストレスなどの影響を受けやすく、臨床ではスクリーニングから経過観察まで幅広く用いられます。

リンパ球は獲得免疫の中心であり、抗体産生や細胞性免疫、免疫記憶の形成に関わります。そのためリンパ球数は単なる数値ではなく、身体が病原体に対処する力の基盤を反映します。ただし数が正常でも機能が低下していることはあり、数値の解釈には臨床状況や他の検査所見を組み合わせる必要があります。

検査は一般に完全血球計算(CBC)と白血球分類(ディファレンシャル)で自動測定され、必要に応じて塗抹標本による目視確認やフローサイトメトリーによるサブセット解析が行われます。自動分析装置は電気インピーダンス法やレーザー散乱法を用いて細胞を分類し、精度管理のもとで日常的に運用されています。

臨床では、リンパ球増多(リンパ球数が高い状態)やリンパ球減少(低い状態)が重要な手掛かりになります。前者はしばしばウイルス感染や慢性リンパ性白血病などで、後者は急性疾患時のストレス、グルココルチコイド投与、栄養不良、HIV感染などで見られます。異常値が一過性か持続的か、症状の有無、他の血球や臓器機能の変化と合わせて評価することが肝要です。

参考文献

正常範囲と生理的変動

成人の絶対リンパ球数は概ね1.0〜3.0×10^9/L(=1000〜3000/μL)程度とされますが、上限を4.8×10^9/L(=4800/μL)まで含む表記もあります。小児ではより高く、新生児や幼児期は生理的リンパ球優位がみられます。施設や分析装置によって基準範囲はわずかに異なるため、報告書の基準値を必ず確認することが大切です。

リンパ球数には日内変動があり、早朝はやや低く、午後から夜間にかけて増える傾向が報告されています。体位や脱水、喫煙、運動、心理的ストレス、月経周期、妊娠なども影響しうる要因です。急激な運動直後には一過性のリンパ球増多が起き、その後に相対的減少が続くこともあります。

感染症やワクチン接種後には、一過性の変動が生じることがあり、臨床症状と時間経過の文脈で解釈する必要があります。例えば急性ウイルス感染の回復期にはリンパ球数が増えることが多い一方、重症感染症や敗血症の急性期にはストレスやサイトカインの影響で減少がみられることがあります。

検査結果の再現性には生物学的変動と分析変動が寄与します。個体内の生物学的変動(within-subject CV)は白血球系で数%から10%程度とされ、測定法のばらつきも加わります。したがってわずかな差は誤差範囲に収まる場合があり、トレンドを追う再検が有用です。

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測定法と理論

日常検査では、CBC自動分析装置がクーロンの原理(電気インピーダンス法)や光学散乱法で血球を計数・分類します。細胞が小孔を通過すると電気抵抗が変化し、パルスの大きさから体積を、レーザー散乱から内部構造を推定して白血球のサブクラスを分類します。5分類装置ではリンパ球、好中球、好酸球、好塩基球、単球に分けます。

絶対リンパ球数(ALC)は、白血球総数(WBC)とリンパ球割合(%)から ALC = WBC ×(リンパ球%/100)で算出できます。自動装置はこの計算を内部で行い、報告します。異常フラグが出た場合は塗抹標本の顕微鏡確認が推奨され、異型リンパ球や芽球の有無、反応性変化の評価に役立ちます。

より詳細な同定にはフローサイトメトリーが用いられ、CD3、CD4、CD8、CD19、CD16/56などの表面マーカーでT細胞、B細胞、NK細胞のサブセットを定量できます。免疫不全の評価やクローナリティの判定、慢性リンパ性白血病などの診断に不可欠です。

測定の精度保証には内部精度管理と外部精度管理が重要で、国際標準(ICSHやCLSI)のガイドラインに基づくキャリブレーションと品質管理が求められます。採血から測定までの前分析過程(抗凝固剤、保存時間・温度、輸送条件)も結果に影響するため、標準化が不可欠です。

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解釈と臨床的意義

成人でおおむね4.0×10^9/L(=4000/μL)を超えるとリンパ球増多、1.0×10^9/L(=1000/μL)未満でリンパ球減少とみなされることが多いですが、施設基準に依存します。重要なのは持続性と文脈で、症状や身体所見、他の血球・生化学異常、薬剤歴、感染曝露などの情報と統合して判断します。

リンパ球増多の主因は反応性(ウイルス感染、百日咳、結、喫煙、脾摘後)とクローナル(慢性リンパ性白血病、その他のリンパ増殖性疾患)に大別されます。末梢塗抹で小型成熟リンパ球優位、フローサイトメトリーで単クローン性B細胞があればCLLが疑われます。一方、異型リンパ球が多数であれば感染性単核症など反応性を示唆します。

リンパ球減少は急性疾患やストレス、グルココルチコイド、栄養不良、放射線・化学療法、HIVやその他のウイルス感染、蛋白漏出や自己免疫疾患でみられます。重篤なリンパ球減少は感染リスク増大と関連し、原因検索と予防策(ワクチン、感染対策)が必要です。

初回で異常が出ても一過性のことが多いため、軽症・無症状の場合は数週間後の再検でトレンドを確認します。持続や進行、貧血・血小板減少の合併、リンパ節腫脹・肝脾腫、発熱・寝汗・体重減少などの「アラーム徴候」があれば、専門医紹介と追加検査(フローサイトメトリー、血清学、画像、骨髄検査)を検討します。

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遺伝と環境の影響

リンパ球数を含む血液学的形質は遺伝と環境の双方の影響を受けます。一般集団のゲノムワイド関連解析では、リンパ球数のSNP遺伝率はおおむね15〜25%程度と推定され、複数の遺伝子座が寄与する多因子形質であることが示されています。ただしSNP遺伝率は全遺伝率の下限であり、双生児研究ではより高い値が報告されます。

双生児や家系研究では、リンパ球や白血球サブセットの総合的な遺伝率が30〜60%の範囲に入るとする報告があり、残りは共有環境・非共有環境・年齢・感染曝露などの影響と解釈されます。人種・民族差や喫煙、肥満、社会経済要因なども水準に影響します。

重要なのは、遺伝率が高いからといって個人の数値が「運命づけられている」わけではない点です。ワクチン、感染予防、禁煙、適切な栄養・運動、薬剤調整などの介入で、リンパ球数や感染リスクは実用的に改善・最適化できます。

研究間で推定値は幅があり、測定手法、年齢構成、民族的背景、統計モデルにより異なります。臨床では「遺伝30〜50%、環境50〜70%程度」といった概算を参考にしつつ、個々の患者の生活環境・既往・薬剤・既感染歴を重視して評価します。

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