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リポタンパク質代謝障害

目次

定義と分類

リポタンパク質代謝障害は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)を運ぶリポタンパク質の生成・運搬・分解のいずれかに異常が生じ、脂質値が慢性的に高いまたは低い状態を指します。代表的には高LDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症などが含まれます。

原因は一次性(遺伝的素因が主)と二次性(糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患、薬剤、アルコール、多量の飽和脂肪摂取など)に大別されます。一次性には家族性高コレステロール血症(LDLRやAPOB変異)、家族性カイロミクロン血症症候群(LPLやAPOC2変異)などの単一遺伝子異常も含まれます。

臨床的には日本では「脂質異常症」として定義され、LDL-C、HDL-C、トリグリセリドの閾値により診断します。非空腹時採血の活用が広がっており、実臨床の利便性が向上しています。

これらの障害は動脈硬化進展や膵炎発症リスクを高め、心筋梗塞や脳卒中など主要な非感染性疾患の重要な危険因子と位置付けられています。個々の型に応じた評価と介入が必要です。

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発生機序

食後、腸管で生成されたカイロミクロンはトリグリセリドを末梢組織へ運び、リポタンパク質リパーゼ(LPL)により加水分解されます。残余は肝臓で処理されます。肝臓はまたVLDLを放出し、末梢での脂質供給後にIDL、LDLへと代謝されます。

LDLはアポB100を介して肝臓や末梢細胞のLDL受容体に結合し、コレステロールを細胞内へ運びます。受容体機能低下(LDLR変異やPCSK9過活性化など)があると血中LDLが上昇します。

HDLは末梢から余剰コレステロールを肝へ戻す逆転送に関与します。ABCA1、LCAT、CETPなどの分子がこの経路で重要で、機能障害はHDL低下や粒子機能不全につながります。

二次性要因(インスリン抵抗性、甲状腺機能低下、腎症、アルコールなど)はVLDL産生亢進、LPL活性低下、受容体発現低下などを介して表現型を悪化させます。

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症状と合併症

多くは無症状で健診で初めて指摘されます。持続的な高LDLコレステロールや高トリグリセリドは、動脈硬化の進展を促し、長期的に冠動脈疾患や脳血管疾患の発症リスクを高めます。

家族性高コレステロール血症などでは、腱黄色腫、角膜輪、皮膚黄色腫などの身体所見が現れることがあります。若年発症の心血管イベントが手がかりになる場合もあります。

極端な高トリグリセリド血症(しばしば>1000 mg/dL)では、急性膵炎のリスクが上昇し、腹痛、悪心・嘔吐を伴う重篤な臨床像を呈することがあります。

長期にわたり適切な管理が行われないと、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患などの主要イベントを引き起こすため、早期発見と包括的な危険因子管理が重要です。

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診断とスクリーニング

診断は空腹時または非空腹時の脂質プロファイル(LDL-C、HDL-C、トリグリセリド、非HDL-Cなど)に基づきます。二次性原因の除外(甲状腺機能、肝腎機能、糖代謝、薬剤歴など)が重要です。

家族性高コレステロール血症が疑われる場合、家族歴、腱黄色腫、LDL-C高値を組み合わせたスコアリングや、遺伝学的検査が用いられます。確定診断には遺伝子変異の同定が役立ちますが、臨床診断も広く行われます。

スクリーニングは、成人の定期健診、糖尿病や高血圧など他の危険因子保有者、心血管イベント既往者で推奨されます。非空腹時測定の有用性が示され、受診機会の拡大に寄与しています。

家族性疾患では血縁者へのカスケードスクリーニングが推奨され、早期介入によりイベントリスク低減が期待できます。

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治療と予防

治療はリスクに応じた生活習慣介入と薬物療法の組み合わせです。飽和脂肪・トランス脂肪の抑制、地中海食パターン、身体活動、体重管理、禁煙、節酒が基本です。

薬物療法の第一選択はスタチンで、必要に応じてエゼチミブ、PCSK9阻害薬、フィブラート、オメガ3脂肪酸製剤などを追加します。重度高TG血症では膵炎予防を優先します。

二次性要因の是正(甲状腺機能低下の治療、糖尿病管理、薬剤見直しなど)は表現型の改善に不可欠です。根本疾患治療が脂質異常の軽減につながります。

予防の観点では、集団レベルでの食環境整備、トランス脂肪酸規制、健康教育、一次予防健診の充実が心血管疾患負担の軽減に寄与します。

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