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ピーナッツアレルギー

目次

概要

ピーナッツアレルギーは、ピーナッツに含まれるたんぱく質に対する免疫系の過剰反応で、摂取後数分〜数時間で蕁麻疹や呼吸器症状、重症例ではアナフィラキシーを起こします。世界的に小児で多く、思春期以降も持続しやすいことが特徴です。生活や学校給食、外食に影響するため、患者・家族の生活管理が重要です。

ピーナッツは木の実(ツリーナッツ)ではなく豆類ですが、臨床的には混同されやすく、併存することもあります。診断や食物除去の範囲を決める際は、ピーナッツと他のナッツを区別しつつ、交差感作の有無を検討します。

診断は病歴、皮膚プリックテスト(SPT)、血清特異的IgE、コンポーネント診断(Ara h 2など)、必要に応じて経口食物負荷試験(OFC)を総合して行います。OFCはゴールドスタンダードですが、アナフィラキシーの危険があるため専門施設で実施します。

治療は急性期のアドレナリン筋注が最重要で、長期管理は回避と緊急時対応教育が中心です。近年は経口免疫療法(OIT)や抗IgE抗体(オマリズマブ)の有効性が示され、意図しない曝露に対する耐容量の引き上げが可能になりつつあります。

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症状

典型的な症状は皮膚(蕁麻疹、紅斑、掻痒、血管性浮腫)から始まり、口腔咽頭のかゆみ、唇やまぶたの腫れを伴います。消化器症状として腹痛、嘔吐、下痢がみられ、呼吸器症状(喘鳴、咳、喉頭絞扼感)や循環器症状(血圧低下、意識障害)に進展するとアナフィラキシーです。

症状は多くが摂取後2時間以内に出現しますが、運動や解熱鎮痛薬、アルコールなどの補助因子(コファクター)で増悪することがあります。二相性反応に注意し、改善後も観察が必要な場合があります。

乳幼児では非特異的なぐずり、顔色不良、反復する嘔吐のみで発症することがあり、保護者や保育者の気づきが重要です。

持続する鼻症状や湿疹の悪化を契機に発見されることもあります。既往の喘息や重度アトピー性皮膚炎は重症化リスク因子です。

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発生機序

ピーナッツアレルギーの多くはIgE介在性です。皮膚や消化管粘膜から取り込まれたアレルゲンに対して樹状細胞がTh2免疫応答を誘導し、B細胞がIgEを産生。IgEは肥満細胞・好塩基球に結合し、再曝露時に脱顆粒・メディエーター放出(ヒスタミン、ロイコトリエン)が起きて症状が出ます。

皮膚バリア障害(アトピー性皮膚炎など)があると、経皮感作により食物アレルゲンに対するIgE応答が起こりやすくなります。家庭内のピーナッツたんぱく暴露(埃中)と感作の関連も報告されています。

ピーナッツ主要アレルゲンは貯蔵たんぱく(Ara h 1, 2, 3など)で、特にAra h 2に対するIgEは臨床的アレルギーをよく反映します。熱や加工で抗原性が変化しますが、焙煎は抗原性を高める可能性が指摘されています。

非IgE介在性機序は稀ですが、食物蛋白誘発胃腸症状などが議論されることがあります。臨床ではIgE介在性を前提に評価し、必要に応じて鑑別します。

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遺伝的要因

双生児研究や家族集積から、食物アレルギーには遺伝的素因が関与します。特に皮膚バリア形成に関わるフィラグリン(FLG)遺伝子の機能喪失変異は、アトピー性皮膚炎とともにピーナッツアレルギーのリスク上昇と関連します。

FLG変異は欧米でよく研究されていますが、民族によって変異の種類や頻度が異なります。日本人でもFLG関連の感受性は示唆されています。

HLAクラスII領域など免疫応答に関わる遺伝子座の関連もゲノムワイド関連解析で報告されていますが、効果量は中等度で、単独での診断には用いられません。

遺伝率(形質の分散を遺伝因子が説明する割合)は研究により幅がありますが、環境因子の影響も大きく、固定的な割合を個人に当てはめることはできません。

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環境的要因・予防

乳児期の早期ピーナッツ摂取は、ハイリスク児においてアレルギー発症を減らすことが無作為化試験(LEAP)で示され、その後の国際ガイドラインに採用されました。重度湿疹や卵アレルギーをもつ乳児では、医療者の指導のもと生後4〜6か月での導入が推奨されます。

皮膚バリア障害と家庭内暴露の組み合わせは感作を助長する可能性があり、湿疹の適切なスキンケアと、食品由来油の皮膚外用は避けるなどの配慮が推奨されます。

完全除去は栄養・生活の質に影響し、誤食時の重症化リスクも続くため、教育と緊急時対応(アドレナリン自己注射携行)が重要です。

治療面では経口免疫療法や抗IgE抗体(オマリズマブ)の有効性が示され、意図しない曝露に対する耐容量を引き上げる選択肢が拡大しています。ただし実施は専門医の管理下で行います。

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