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ビフィズス菌の存在量

目次

用語の定義

ビフィズス菌の存在量とは、ヒトなどの腸内に棲むビフィズス菌属の細菌がどの程度含まれているかを示す概念です。ふつうは便中の菌叢解析で相対存在量(総細菌に占める割合)や、定量PCRでの絶対量として表されます。

この指標は疾患名ではなく、生体の状態を表す生物学的特性です。したがって「罹患率」や「症状」といった病気特有の用語は直接は当てはまりませんが、健康との関連を検討するうえで重要です。

乳児期にはビフィズス菌が腸内の主要構成菌となることが多く、離乳・加齢とともに相対存在量が低下するのが一般的なパターンです。ただし個人差や地域差が大きく、食習慣や遺伝要因の影響も受けます。

研究では16S rRNAシーケンスやショットガンメタゲノミクスによりビフィズス菌の存在量や種レベルの構成が評価されます。手法により感度・分解能が異なるため、結果解釈には注意が必要です。

参考文献

意義と健康との関係

ビフィズス菌は炭水化物を発酵し、酢酸などの短鎖脂肪酸を産生します。これらは腸上皮のエネルギー源となり、腸管バリア機能の維持や病原体の定着阻害に寄与すると考えられています。

乳児では母乳オリゴ糖(HMO)を資化するビフィズス菌の優勢化が腸内環境の成熟に関与します。成人では食物繊維やプレバイオティクスの摂取がビフィズス菌の増加につながることが多いです。

一方、抗菌薬の使用や食物繊維の少ない食生活はビフィズス菌の減少と関係しうると報告されています。ただし、存在量の多少が直ちに疾患の原因・結果を意味するわけではありません。

ビフィズス菌の存在量は代謝や免疫との関連が多数報告されていますが、因果関係を明らかにするには介入試験やメンデル無作為化などの方法論が必要です。

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影響因子(遺伝と環境)

ビフィズス菌の存在量には環境因子が大きく、食事、授乳形態、抗菌薬、居住地域、年齢などが強く影響します。特に食物繊維や発酵食品、乳製品の摂取状況が重要です。

遺伝因子も無視できず、LCT(乳糖分解酵素)遺伝子座、FUT2(セクレター)やABO血液型関連座位などがビフィズス菌の存在量と関連することが国際コンソーシアムで示されています。

双生児研究やゲノム関連解析では、腸内全体の多様性に対する遺伝の寄与は限定的ですが、特定の分類群では中等度の遺伝率が推定されることがあります。

総じて、遺伝的要因の寄与は一桁%から数十%程度にとどまり、可変性の大半は環境的な要因で説明されると考えられています。

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測定方法

ビフィズス菌の存在量は、16S rRNA遺伝子のアンプリコンシーケンスにより相対存在量として測定されるのが一般的です。コストが比較的低く、多検体比較に向きます。

ショットガンメタゲノミクスは種・株レベルの分解能と機能推定に優れ、定量的な情報も得やすいですが、費用と解析負荷が高くなります。

qPCRは特異的プライマーを用いてビフィズス菌属や特定種の絶対量を定量できます。内部標準や糞便量補正の取り扱いが推定の精度に影響します。

試料採取・保存条件(温度、時間、保存液)も結果に影響します。プロトコールの標準化とバッチ効果の制御が比較研究には不可欠です。

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介入と注意点

プレバイオティクス(イヌリン、フラクトオリゴ糖など)はビフィズス菌の選択的増殖を促すことが臨床試験で示されています。用量反応関係や胃腸症状への配慮が必要です。

特定のビフィズス菌株を含むプロバイオティクスは、摂取中に一過性に存在量を高めることがありますが、定着は株や個人により異なります。

抗菌薬の不要な使用を避ける、食物繊維を十分に摂取する、発酵食品を取り入れるなどの生活習慣が存在量の維持に寄与しうると考えられます。

ただし、存在量の最適値は個人やライフステージで異なり、過度な自己判断は避け、既往症や薬剤との相互作用については医療者に相談することが推奨されます。

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