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ハウスダスト(ダニ)アレルギー性鼻炎

目次

定義と概要

ハウスダスト(ダニ)アレルギー性鼻炎は、室内に存在するチリ(ハウスダスト)に含まれるヒョウヒダニ(ヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinus・コナヒョウヒダニD. farinae など)のアレルゲンに対するIgE抗体を介したI型アレルギー反応で生じる鼻粘膜の炎症性疾患です。典型的には鼻水、くしゃみ、鼻づまり、鼻や眼のかゆみがみられ、通年性に症状が持続・増悪します。

ダニの主要アレルゲンには、Der p 1/Der f 1(システインプロテアーゼ)やDer p 2/Der f 2(MD-2様リポ多糖結合蛋白)などがあり、これらが鼻粘膜の上皮バリアを攪乱し、Th2型免疫応答(IL-4, IL-5, IL-13)を誘導します。結果として好酸球浸潤や肥満細胞活性化が起こり、速発相と遅発相の症状を引き起こします。

本疾患はQOL(睡眠、学業・仕事の能率、集中力)に大きく影響します。未治療・コントロール不良の場合、嗅覚障害、中耳炎、副鼻腔炎の併発、さらには喘息の増悪リスクとも関連します。適切な環境整備、薬物療法、アレルゲン免疫療法により、多くの場合で症状コントロールが可能です。

アレルギー性鼻炎は世界で10–30%以上が罹患するとされますが、ダニ関連の通年性鼻炎は特に湿潤・温暖な地域や高気密住宅で頻度が高く、日本でも主要な原因の一つです。診断は病歴、身体所見、特異的IgE検査や皮膚試験の結果を組み合わせて行います。

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病態・発生機序

ダニ主要アレルゲンDer p 1/Der f 1はプロテアーゼ活性により鼻上皮のタイトジャンクションを切断し、上皮バリア機能を低下させます。これによりアレルゲンの透過性が高まり、樹状細胞が取り込んだアレルゲンを提示することでTh2分化が促進されます。上皮由来サイトカイン(TSLP, IL-25, IL-33)もTh2炎症を増幅します。

感作後の再曝露では、肥満細胞表面のIgE-FcεRI架橋によりヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンが即時放出され、くしゃみ・鼻汁・鼻粘膜浮腫を惹起します。数時間後には好酸球やTh2細胞の浸潤が進み、遅発相反応として鼻閉や過敏性の亢進が持続します。

気道の神経系も関与し、感覚神経の過敏化や副交感神経優位が鼻汁分泌やくしゃみに寄与します。慢性的な炎症は粘膜リモデリングを生じ、下気道(喘息)との「一気道一疾患」概念で病態連関が説明されます。

感作の成立には遺伝素因と環境曝露が相互作用します。家族歴、皮膚バリア遺伝子の多型、HLA領域やIL-4/IL-13経路の多型が感作リスクに関与し、室内湿度、寝具・カーペット、通気性、喫煙・大気汚染などが曝露や炎症を助長します。

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疫学

アレルギー性鼻炎全体の生涯有病率は世界的に10–30%とされ、児童・青年層で高く、成人でも一般的です。ISAACなどの国際調査では小児の鼻結膜炎症状が地域により大きく変動し、都市化や西洋化に伴い増加傾向が示されています。

日本ではスギ花粉症が注目されますが、通年性(ダニ・ハウスダスト)も主要な病型です。ガイドラインや全国調査ではアレルギー性鼻炎全体の有病率は増加傾向で、通年性の割合も高いことが示唆されています。

性差は小児期に男性優位、思春期以降は女性優位へ逆転する傾向が報告されています。年齢とともに症状は変動し、高齢で感作率が低下する一方、長期の慢性炎症による鼻閉主体の症状が持続することもあります。

ダニ関連の感作は温湿度、住宅構造、寝具・カーペットの有無などに影響されます。亜熱帯・温暖湿潤地域や高気密住宅ではダニ密度が高く、感作と症状発現のリスクが上がります。

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診断

診断は、典型症状(くしゃみ、鼻汁、鼻閉、かゆみ)、通年性の経過、ダニ曝露での増悪歴などの病歴と、鼻粘膜の蒼白浮腫や水性鼻汁といった身体所見の組合せで推定します。

確定には、特異的IgE抗体の証明が有用です。血液検査(ImmunoCAP等)や皮膚プリックテストでダニ(D. pteronyssinus, D. farinae)への感作を確認します。必要に応じて鼻汁好酸球検査や鼻誘発試験が行われます。

鑑別として、非アレルギー性鼻炎(血管運動性鼻炎、薬剤性鼻炎)、慢性副鼻腔炎、鼻中隔彎曲症、上気道感染などを考慮します。併存するアレルギー性結膜炎や喘息の評価も重要です。

小児や重症例ではQOL尺度(RQLQ等)や症状日誌、デジタルツールを用いた記録が治療効果の評価に役立ちます。

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治療と予防

第一は環境整備です。室内湿度を50%未満に保つ、寝具の高温洗浄・乾燥、ダニ透過防止カバーの使用、カーペットや布製ソファ・ぬいぐるみの管理、HEPAフィルター付き掃除機での定期清掃、換気の徹底が推奨されます。喫煙や受動喫煙は避けます。

薬物療法は、第二世代経口抗ヒスタミン薬、局所(点鼻)ステロイド、点鼻抗ヒスタミン、ロイコトリエン受容体拮抗薬、必要に応じて抗コリン薬(鼻汁過多)やクロモグリク酸などを症状・重症度に応じて用います。点鼻ステロイドは鼻閉に特に有効です。

アレルゲン免疫療法(皮下・舌下)は、ダニ特異的IgEが証明され、症状が持続する例で検討します。数年の継続で症状・薬物使用量の減少、長期寛解、喘息発症抑制の可能性が示されています。適応・禁忌、アナフィラキシーなどの安全性評価の上で実施します。

予防として、早期からの環境整備の徹底、ウイルス感染予防、肥満や睡眠不足の回避、既存アレルギー疾患のコントロールが重要です。地域の花粉・カビ・ダニ情報やアプリを活用した曝露管理も有用です。

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