Forest background
バイオインフォの森へようこそ

テロメア長

目次

概要

テロメアは染色体の末端にあるDNA反復配列(ヒトではTTAGGG)とタンパク質から成る構造で、染色体の末端を保護するキャップのような役割を担います。テロメア長は細胞が分裂を重ねるたびに短くなり、一定以下になると細胞老化やアポトーシスの引き金になります。

ヒトでは生殖細胞や一部の幹細胞・活性化リンパ球などでテロメラーゼが働きテロメアを延長できますが、大半の体細胞ではテロメラーゼ活性が低く、年齢とともに平均テロメア長は短縮します。この短縮は生活習慣や環境ストレスの影響も受けます。

テロメア長は「疾患」そのものではなく、生物学的加齢や病気のリスクに関わる生体指標の一つです。個人差が大きく、同年齢でも大きく異なる場合があります。体内の細胞種によっても長さや短縮速度に違いがあります。

研究や一部の臨床で測定されますが、一般健常人の日常診療で標準的に測る指標ではありません。測定法にはqPCR、サザンブロット(TRF)、フローFISHなどがあり、それぞれ精度やコスト、必要なサンプル量が異なります。

参考文献

遺伝・環境の寄与

テロメア長の個人差には遺伝と環境の両方が関与します。双生児研究と家系研究のメタ解析では、遺伝率は概ね30〜60%の範囲に収まり、年齢や集団によってばらつきます。

若年層では遺伝の寄与が比較的大きく、成人・高齢になると環境・生活要因の寄与が増える傾向が示唆されています。これは加齢とともに酸化的ストレスや炎症など累積曝露の影響が蓄積するためと考えられます。

ゲノムワイド関連解析(GWAS)ではTERT、TERC、OBFC1、RTEL1、POT1など複数の座位が末梢血白血球テロメア長と関連し、遺伝的感受性の存在が裏づけられています。

一方で喫煙、肥満、身体活動、ストレス、睡眠、社会経済状況、環境汚染物質など、多様な環境因子がテロメア短縮の速度に影響します。したがって遺伝と環境はいずれも無視できません。

参考文献

発生機序(短縮の生物学)

DNA複製には末端複製問題があり、ラギング鎖の合成でプライマー部分が置換できず、細胞分裂のたびに染色体末端がわずかに短くなります。テロメアはこの不可避な短縮を吸収し、遺伝情報を守ります。

テロメラーゼはTERT(逆転写酵素)とTERC(RNA鋳型)からなり、テロメアに反復配列を付加して長さを維持します。大半の体細胞で活性が低いため、加齢とともにネットでは短縮します。

活性酸素によるDNA損傷や慢性炎症はテロメア配列に損傷を与え、修復の過程で短縮を促進します。心理社会的ストレスや睡眠不足も間接的に酸化・炎症経路を介して影響すると報告されています。

テロメアはシェルテリン複合体(TRF1/2, POT1, TPP1, TIN2, RAP1)によりループ構造(t-loop)を形成し、DNA損傷応答から末端を隠蔽します。シェルテリンの異常は末端保護不全を引き起こします。

参考文献

関連遺伝子と稀な疾患

一般集団のテロメア長に関与する多型として、TERT、TERC、OBFC1、RTEL1、POT1、NAF1、ACYP2などが同定されています。これらはテロメア維持や複製ストレス応答に関わります。

まれに、これらや関連因子の実質的機能喪失変異によりテロメア生物学的疾患(ディスケラトーシス・コンジェニタ等)が生じ、重篤な骨髄不全、肺線維症、肝疾患、皮膚粘膜異常などを呈します。

家系内では常染色体優性や劣性、X連鎖など多様な遺伝形式がみられ、表現型は不完全浸透や年齢依存性を示すことがあります。遺伝学的検査と機能評価が診断に重要です。

一般集団におけるテロメア長の遺伝率は中等度ですが、これら稀な病的変異の影響は大きく、臨床的には別概念として扱われます。

参考文献

環境・生活要因と介入の示唆

喫煙はテロメア短縮と一貫して関連し、肥満やインスリン抵抗性、低身体活動、慢性心理ストレス、社会的不利も短縮と関連が報告されています。

逆に、定期的な中等度の運動、バランスのよい食事(地中海食パターンなど)、適正体重の維持、十分な睡眠、ストレス対処は、比較的長いテロメアと関連する観察研究が多いです。

ただし、因果関係は明確でない点に注意が必要です。介入でテロメア長そのものを確実に延ばすと結論できるエビデンスは限定的で、交絡や逆因果の影響が残りえます。

テロメア生物学的疾患ではアンドロゲン(例:ダナゾール)がテロメア長や血球に改善を示す試験がありますが、一般の抗老化目的での使用は推奨されません。

参考文献