サルコイドーシス
目次
概要
サルコイドーシスは、原因不明の全身性肉芽腫性疾患で、肺やリンパ節、眼、皮膚など複数臓器に非乾酪性肉芽腫が形成されるのが特徴です。多くは無症候で胸部レントゲン異常から偶然見つかりますが、慢性化して臓器障害や線維化に至る例もあります。
発症年齢は若年成人から中年に多く、女性にやや多い傾向が知られています。人種差や地域差が大きく、北欧やアフリカ系集団で多く、日本では比較的少ない頻度です。
病因は単一ではなく、遺伝的素因に環境要因が加わり、過剰な免疫反応が持続することで肉芽腫が形成されると考えられています。感染因子や無機粉じんなど、候補はあるものの決定的原因は確立していません。
診断は、臨床像・画像での臓器病変の推定、組織生検での非乾酪性肉芽腫の証明、他疾患の除外の三本柱で行います。経過観察だけで自然寛解する例も多く、活動性や臓器障害に応じて治療を選択します。
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症状と臓器別特徴
呼吸器では咳、息切れ、胸痛などがあり、胸部X線やCTで両側肺門リンパ節腫大や間質性変化が見られます。皮膚では結節性紅斑やループス・ペルニオが代表的です。
眼では前部ぶどう膜炎が多く、視力低下や充血、痛みを伴うことがあります。心臓病変は不整脈、伝導障害、心不全、突然死のリスクと関連し、神経病変は脳神経麻痺や髄膜炎様症状を呈します。
倦怠感、微熱、体重減少などの全身症状も少なくありません。高カルシウム血症や腎機能障害を来すこともあり、特に日光曝露やビタミンD代謝の変化が関与します。
臓器侵襲の範囲と活動性は個人差が大きいため、定期的な臨床評価、呼吸機能検査、眼科・心電図などの臓器別モニタリングが重要です。
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病態生理
肉芽腫は、抗原に反応した樹状細胞により活性化されたCD4陽性T細胞(主にTh1/Th17)とマクロファージが集合し、サイトカイン(IFN-γ、IL-2、TNF-αなど)により維持されます。
持続抗原刺激があると、類上皮細胞や多核巨細胞を含む緻密な肉芽腫が形成され、周囲の線維化を誘導します。病変は非乾酪性で、結核など乾酪性肉芽腫とは組織学的に異なります。
この免疫反応は遺伝的背景(HLA遺伝子型など)に影響を受け、同じ抗原曝露でも個体差が生じます。抗原の候補としてプロピオニバクテリウムや分枝菌成分、無機粉じん等が挙げられます。
慢性例では線維化が進み、肺機能低下や心筋の瘢痕化など不可逆的障害が問題になります。早期に炎症活動性を適切に抑えることが重要です。
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診断と検査
診断は、(1)臨床所見・画像でサルコイドーシスが疑われる臓器病変がある、(2)生検で非乾酪性肉芽腫を確認、(3)他の肉芽腫性疾患を除外、の組み合わせで行います。
肺門リンパ節の経気管支針吸引(EBUS-TBNA)や末梢肺病変への経気管支生検、皮膚・眼付属器の生検などが活用されます。ACEや可溶性IL-2受容体は補助指標です。
全身評価として、呼吸機能検査、心電図・必要により心エコー/心臓MRI、眼科検査、血液・尿検査が推奨されます。臓器重症度の把握と治療方針決定に必須です。
画像では胸部X線のステージ分類や高分解能CTが用いられ、PET-CTは活動性評価や生検部位選択に有用な場合があります。
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治療と予後
無症候や軽症例は経過観察のみで自然寛解することが多い一方、視力・心機能・呼吸機能に関わる臓器障害では治療が必要です。第一選択は全身性コルチコステロイドです。
ステロイド反応不十分や副作用軽減目的では、メトトレキサート、アザチオプリン、レフルノミド、ミコフェノール酸などの免疫抑制薬を併用します。皮膚や高Ca血症にはヒドロキシクロロキンが有効なことがあります。
難治例では抗TNFα抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ)が選択されることがあります。心臓病変ではデバイス治療(ペースメーカー/ICD)を含む多職種管理が重要です。
予後は多様で、多くは数年以内に寛解しますが、一部で慢性進行や線維化を来します。定期フォローと生活習慣の最適化が長期転帰に寄与します。
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