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わきが

目次

定義と概念

わきが(腋臭症)は、腋窩の特有の強い体臭が日常生活で問題となる状態を指します。主にアポクリン汗腺から分泌される成分が皮膚常在細菌によって分解され、におい物質が生成されることで生じます。

体臭そのものは生理的現象ですが、強度や持続性、本人・周囲の苦痛が大きい場合に腋臭症と臨床的に判断されます。文化・社会的背景によって受け止め方は異なり、生活の質(QOL)への影響が評価に含まれます。

腋臭症は多汗症としばしば共存しますが、機序は完全には同一ではありません。汗量の増加はにおいの拡散を助長しますが、根本は分泌成分と細菌の相互作用にあります。

診断は視診・問診と嗅覚評価が中心で、においの強度評価スケールや写真での皮膚変化確認、生活への影響聴取が行われます。遺伝的背景や家族歴も参考情報です。

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症状と日常への影響

主症状は腋窩の強いにおいで、発汗や運動後、緊張時に増悪します。衣類の黄ばみや湿潤感、自己・他者が気づくにおいの持続がみられることがあります。

思春期に発症・増悪することが多く、性ホルモンの影響が示唆されます。年齢とともに軽減する例もありますが、個人差が大きいのが特徴です。

心理社会的影響として、対人不安、回避行動、学業・就労への支障が生じることがあります。適切な情報提供と治療選択がQOL改善に重要です。

身体所見では、腋毛の存在、皮膚の擦過痕、二次感染の兆候などを確認します。過度の洗浄や香料使用による皮膚炎にも留意します。

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原因と発生機序

アポクリン汗はタンパク質や脂質を含み、分泌直後は無臭に近いものの、皮膚上のコリネバクテリウム属などが酵素で分解し、短鎖脂肪酸やチオアルコールなどのにおい物質を生成します。

主要なにおい物質の一つである3M3SH(3-メチル-3-スルファニル-1-ヘキサノール)は、含硫前駆体から細菌酵素により遊離されることが示されています。この過程がにおいの個人差を生みます。

遺伝子ABCC11はアポクリン分泌物中の前駆体輸送に関与し、その多型が分泌成分と耳あか型に影響します。A対立遺伝子は乾性耳あかと弱い腋臭に関連します。

環境因子(発汗量、気温湿度、衣類、衛生、皮膚常在菌叢)もにおい形成に関与し、生活習慣の調整で一定の軽減が期待できます。

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遺伝学と疫学

ABCC11のrs17822931変異は民族間で頻度差が大きく、東アジアでAアレル頻度が高く、欧州・アフリカ系で低い傾向があります。これが腋臭の集団差の一因と考えられます。

A/A型では腋臭リスクが低下し、Gを含む型でリスクが高いことが複数の研究で示されています。ただし、遺伝子だけで全ては説明できません。

罹患率は厳密に把握困難ですが、思春期以降に自覚が増え、男女差は地域や定義によりばらつきます。東アジアでは臨床的腋臭の割合は比較的低いとされます。

耳あか型(湿性/乾性)は腋臭の手がかりになりますが、個人の診断には包括的評価が必要です。遺伝子検査は補助情報に留まります。

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治療と予防

保存的治療には、アルミニウム塩の制汗剤、抗菌石鹸や外用抗菌薬、腋毛の処理、通気性衣類の選択、入浴・洗浄の工夫などがあります。

発汗抑制目的のボツリヌス毒素注射はにおいにも一定の改善をもたらすことがありますが、効果は一時的です。副作用と費用対効果を評価します。

外科的治療は、皮弁下でのアポクリン汗腺の剪除、吸引-掻爬、レーザーやマイクロ波などのエネルギーデバイスがあります。再発率や瘢痕化のリスクを考慮します。

予防では、発汗トリガー(辛味、アルコール、ストレス)への対策、運動後の早期洗浄、衣類管理、皮膚トラブルの早期治療が有用です。

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