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その他の非上皮性皮膚がん

目次

定義と範囲

その他の非上皮性皮膚がん」とは、表皮や付属器由来の上皮性腫瘍(基底細胞がん・有棘細胞がんなど)や、しばしば別枠で扱われる悪性黒色腫・皮膚悪性リンパ腫を除いた、主に間葉系や神経内分泌系など非上皮性由来の皮膚悪性腫瘍の総称です。臨床現場では、非常に稀で専門性の高い腫瘍群として取り扱われます。

代表的な腫瘍には、メルケル細胞癌(Merkel cell carcinoma)、皮膚血管肉腫(cutaneous angiosarcoma)、隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans; DFSP)、カポジ肉腫(Kaposi sarcoma)、異型線維性黄色腫/多形性皮膚肉腫(AFX/PDS)などが含まれます。腫瘍ごとに原因や振る舞い、治療が大きく異なるのが特徴です。

本カテゴリは「その他」と称される通り、頻度の高い皮膚がんとは異なる発生母地や病理像を示し、診断・治療アルゴリズムも多様です。そのため、個々の腫瘍に対する正確な情報と専門医の関与が重要になります。

疫学的にはいずれも希少がんに属し、国や地域、年齢構成、紫外線曝露や感染症の流行状況(HHV-8、HIV など)によって相対的な発生頻度が大きく変動します。

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主な腫瘍タイプの概観

メルケル細胞癌は高齢者の露光部に無痛性で急速増大する赤〜紫色結節として発見されることが多く、ウイルス(Merkel cell polyomavirus)関連例と強い紫外線変異署名を持つ例に大別されます。予後は未治療では不良ですが、免疫療法の登場で転帰が改善しています。

DFSPは幹部に多いゆっくり進行する硬い局面/結節で、病理学的には紡錘形細胞が密に増殖します。COL1A1-PDGFB融合遺伝子がドライバーで、広範切除やモース手術が標準、進行例にはチロシンキナーゼ阻害薬が有効です。

皮膚血管肉腫は頭頸部(特に頭皮)に多く、打撲痕のような紫斑から始まり浸潤・転移が速い難治腫瘍です。原発・術後放射線・リンパ浮腫関連など病因は多様で、手術・放射線・化学療法の集学的治療が必要です。

カポジ肉腫はHHV-8感染を必須因子とする血管増殖性腫瘍で、古典型、アフリカ風土病型、免疫抑制関連、AIDS関連に分類されます。HIV治療の普及でAIDS関連は減少しましたが、地域差が大きい腫瘍です。

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発生要因と分子機序

MCCの多くはMCPyVのゲノムが腫瘍細胞へ組み込まれ、ウイルス抗原(LT/ST)が腫瘍化を促進します。一方でウイルス陰性例は高紫外線地域に多く、腫瘍全体に大量のUV関連体細胞変異を持ち、腫瘍免疫回避と相まって進展します。

DFSPはCOL1A1-PDGFB融合によりPDGFRβ経路が恒常的に活性化し、オートクラインに増殖が駆動されます。これは分子標的薬イマチニブの有効性と直結し、分子診断が治療選択の要になります。

皮膚血管肉腫では、放射線関連やリンパ浮腫関連例でMYC増幅が高頻度にみられ、血管内皮細胞由来の悪性化に関与します。頭頸部原発ではUVシグネチャーが検出されることもあり、腫瘍の多様性が治療難易度を高めます。

カポジ肉腫ではHHV-8のラチントランスクリプトやバイラルオンコプロテインが血管新生と炎症を促進し、免疫抑制状態で腫瘍が顕在化します。免疫再構築(ARTなど)が病勢を制御することが多いのはこのためです。

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診断と病期評価

診断の第一歩は十分な皮膚生検と専門病理による免疫染色です。MCCではCK20点状陽性・神経内分泌マーカー、DFSPではCD34陽性、血管肉腫ではCD31/ERG、カポジ肉腫ではHHV-8 LANA免疫染色が有用です。

病期評価は腫瘍タイプに応じて画像検査を組み合わせます。MCCではセンチネルリンパ節生検とPET/CT、血管肉腫では造影CT/MRI、DFSPは局所進展評価が主体です。KSでは全身皮疹と粘膜病変の評価、免疫状態の確認が重要です。

鑑別診断は広範で、良性血管腫や皮膚転移、皮膚膿瘍などが紛らわしいことがあります。早期から皮膚腫瘍に慣れた皮膚科・形成外科・腫瘍内科の連携が推奨されます。

希少がんなので、診断確定後は可能ならば希少がんセンターや経験豊富な施設へ紹介し、病理レビューや臨床試験オプションを検討することが望まれます。

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治療の概説と予後

MCCは広範切除とセンチネルリンパ節生検、適応に応じた放射線が基本で、進行再発例にはPD-1/PD-L1阻害薬(ペムブロリズマブ、アベルマブなど)が標準選択肢です。化学療法は奏効はあるものの持続性に乏しい傾向です。

DFSPは外科的完全切除が最重要で、再発リスク低減のためモース顕微鏡手術が有用です。切除不能・転移例や線維肉腫様変化例ではイマチニブが奏効しうるため、分子検査が鍵になります。

皮膚血管肉腫は手術可能例でも局所再発・転移が多く、術後放射線やパクリタキセル、ドキソルビシン、パゾパニブ、エリブリンなどを用いた集学的治療が一般的です。免疫療法の有効性も一部で示唆されています。

カポジ肉腫は病型と病勢に応じて、抗レトロウイルス療法(ART)、局所療法、リポソーマルドキソルビシンやパクリタキセル、インターフェロンαなどを組み合わせます。予後は背景免疫状態の改善と治療への反応性に左右されます。

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