お茶の摂取
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定義と概要
お茶の摂取とは、カメリア・シネンシス(チャノキ)を原料とする飲料(緑茶・ウーロン茶・紅茶など)を飲むことを指し、世界で最も広く消費されるノンアルコール飲料の一つです。茶種は製法で異なり、カテキンなどのポリフェノール、カフェイン、テアニンなどの含有比率が変わります。これらの成分は覚醒、味、健康影響に関わります。
健康影響については、観察研究で心血管疾患や全死亡の低下と関連する報告がある一方、因果関係の確定には無作為化試験が必要です。例えば英国の大規模コホートでは、砂糖やミルクの有無にかかわらず紅茶の多飲と死亡リスク低下の関連が示されましたが、ライフスタイルの交絡に注意が必要です。
安全面では、成人のカフェイン総摂取が1日400mg程度までであれば一般に健康な成人では安全とされ、妊娠中は200mg/日以下が推奨されます。茶のカフェイン量は抽出条件で変動し、一般的な一杯(約240mL)で20〜60mg前後と見積もられます。
文化・嗜好・習慣としての位置付けも重要で、温熱性飲料としての摂取は水分補給、社交、食事習慣と密接に関わります。これらの文脈的要因は摂取量の地域差や年代差を生み、健康影響の評価にも影響します。
参考文献
- EFSA Scientific Opinion on the safety of caffeine
- Tea consumption and mortality in UK Biobank (Ann Intern Med 2022)
- NIH ODS Caffeine Fact Sheet (Consumer)
生理作用と発生機序
カフェインはアデノシン受容体拮抗薬として中枢神経系で眠気を抑え、覚醒度を高めます。また軽度の利尿作用、心拍数や血圧の一時的上昇をもたらすことがあります。個人差は大きく、同じ量でも反応は異なります。
カテキン(特にEGCG)は抗酸化・抗炎症作用、血管内皮機能の改善に関与すると考えられています。動物・機序研究では脂質代謝や糖代謝への影響が示唆されますが、ヒトでの効果は用量・製剤・背景食によって一貫しません。
テアニンはアミノ酸で、リラックス感や注意力の質的変化への寄与が示唆されています。茶ではカフェインとテアニンの同時摂取により、単独のカフェインよりも不安感が緩和される可能性が指摘されています。
ポリフェノールは非ヘム鉄の吸収を阻害し得ます。鉄欠乏が気になる人は、食事中や直後の濃い茶の多量摂取を避け、時間をずらすとよいとされます。薬剤との相互作用(例:一部の精神刺激薬)にも注意が必要です。
参考文献
- EFSA Scientific Opinion on the safety of caffeine
- Tea and health: a review (J Am Coll Nutr 2006)
- NHS: Iron deficiency anaemia
遺伝的素因と環境要因
お茶の摂取量や好みには遺伝と環境の両方が関与します。ゲノム研究ではカフェイン代謝関連(CYP1A2、AHR)や苦味受容体(TAS2R群)、カフェイン感受性に関わるADORA2Aなどが、コーヒーや茶などカフェイン飲料の摂取や反応の個人差に寄与することが示されています。
双生児・家族研究や大規模バイオバンク解析から、飲料嗜好の遺伝率は中等度(概ね30〜50%程度)と推定される報告があり、残りは文化・入手しやすさ・同居家族の習慣・マーケティング・勤務時間帯など環境要因が担います。
遺伝子は主に「代謝速度(カフェインの分解の速さ)」「味覚(苦味感受性)」「生理反応(不安・動悸などの出やすさ)」を通じて摂取行動に影響します。例えば代謝が速い人は不快症状が出にくく、摂取量が多くなりやすいという傾向が観察されています。
一方で、同じ遺伝的背景でも文化圏や家庭環境が変わると摂取量は大きく変動します。職場でのホットドリンク提供、気候、伝統的食文化、砂糖や乳の追加の慣習などが総摂取と健康影響に影響します。
参考文献
- Coffee and Caffeine Genetics Consortium (Nat Genet 2015)
- ADORA2A polymorphism and caffeine-induced anxiety
- Genetics of food preferences (Nat Hum Behav 2022)
疫学と摂取状況
世界の茶市場は拡大を続け、アジア・北アフリカ・英国などで特に消費が多いと報告されています。国により茶種や抽出法、添加物が異なり、健康影響の比較には注意が必要です。
日本では緑茶の家庭内消費が根強く、自販機・ペットボトル飲料の普及もあり若年層の冷茶摂取が増えました。一方、年代が上がるほど温かい煎茶の飲用頻度が高い傾向が業界統計で示されています。
大規模コホートでは日常的な紅茶飲用者の割合が高く、量と健康アウトカムの関連が検討されています。ただし観察研究では交絡や逆因果の可能性が残り、結果の解釈には慎重さが求められます。
性別・年齢・所得・喫煙・運動などの因子が摂取に影響します。例えば日本の家計調査や業界データでは世帯構成と購入形態(葉茶、ペットボトル)に差があり、季節性も見られます。
参考文献
- FAO: World tea production and trade reports
- All Japan Tea Association statistics
- Tea consumption and mortality in UK Biobank (Ann Intern Med 2022)
安全性・リスクと予防
一般成人ではカフェイン総量が400mg/日まで、単回200mg程度までなら急性毒性の懸念は低いとEFSAは結論しています。妊娠中は200mg/日以下が推奨され、授乳中も乳児の覚醒に注意が必要です。
過量摂取では不眠、焦燥、動悸、振戦、胃部不快、頻尿などの症状が出現しやすく、重篤な中毒では不整脈や痙攣に至ることがあります。疑う場合は摂取中止と水分、必要に応じ医療機関受診が推奨されます。
予防としては、1日のカフェイン量を把握し(茶、コーヒー、清涼飲料、栄養ドリンクを合算)、夕方以降の摂取を控える、鉄欠乏傾向のある人は食事中の濃い茶を避ける、睡眠・不安症状が出る量を個々で見極めることが重要です。
薬剤・サプリとの相互作用にも注意します。例えば一部の気管支拡張薬や精神刺激薬と同時に多量のカフェインを摂ると副作用が増強する可能性があります。妊娠中の指針や中毒時の対応は公的機関の資料を参照してください。
参考文献

